本研究では本症に類似したマウスモデルとして胆管結紮マウスおよびpoly(I:C)腹腔内投与による胆汁鬱滞マウスを作成した。このモデルにより肝内胆汁鬱滞のモデルを作成することができた。これらの肝生検組織よりlaser capture microdissectionにより肝内胆管のみを採取し、採取した組織よりmRNAを抽出した。また比較検討の目的に全肝からもmRNAを抽出した。これらのRNAを用いて、cDNA microarrayをおこない、発現の違いを検討するという実験を行った。 microdissectionからのRNAの収率が確保できずに全肝のみの検討となった。25395の遺伝子発現のプロファイルを行ったところ、胆管結紮マウスとpoly(I:C)腹腔内投与による胆汁鬱滞マウスとの比較で発現が亢進していた遺伝子が1227種存在した。そのうち8倍以上の発現亢進が21種類で、ケモカインレセプターCcl2やエンドトキシンレセプターCD14などの炎症に関連する因子やサイトケラチンなどの細胞骨格関連、カドヘリンなどの細胞接着関連遺伝子が含まれていた。これらは胆道閉鎖症の肝生検での検討でも有意な差が見られており、今回のモデルの妥当性が示唆された。4倍以上の発現亢進が、ケモカインレセプターCc2などの炎症関連因子、Annexin A4などのアポトーシス関連因子、肝内胆管減少症に関連する遺伝子であるJagged1など196個認められた。一方でチトクローム関連遺伝子など27個が8倍以上の減少、Insulin-like growth factor biding protein 1などの増殖関連因子など86個の遺伝子が4倍以上の減少を来していた。 また同時に人での肝内の炎症の状態の把握を行うために、CD86に注目して検討を行った結果、肝内胆管細胞で異常な発現を認め、本症の炎症反応に関連している可能性を明らかにした。
|