20年度の検討では、肉眼的および病理組織学的観察においては、移植組織の虚血時間が長かった場合に拒絶反応が強く現れ、in vitroの検討として行ったリンパ球混合試験でも長時間虚血組織を移植された宿主において移植抗原に対するT細胞活性が強く出現するという結果をえた。また移植組織のMHC class II抗原の免疫染色で、長時間虚血の組織においてMHCclass II抗原の強い発現が観察された。21年度はさらにデータを重ね、この成果を学術誌に掲載することができた。さらなる検討としてischemic preconditioningやドナーへの移植前のステロイド局所投与が移植後の拒絶反応を抑制し得るか検討した。しかし、今回の検討では明らかな拒絶反応抑制効果は確認できなかった。今回の検討によって虚血後再潅流障害が拒絶反応を増強していることが分かった。遊離皮弁を用いてこの検討を行った報告はなく、これは体表から観察が容易であるため、拒絶反応の変化を観察する上で、今回我々が用いたラットの移植モデルは非常に有用であるということが確認できた。 今回の検討でischemic preconditioningやドナーへの移植前のステロイド投与にて拒絶反応を抑制することはできなかった。しかし、このモデルをつかい拒絶反応の原因究明や、虚血再潅流障害などの拒絶反応増強因子を解明し、これを抑制する方法を開発することで臨床現場で多く行われているヒトからヒトへの臓器移植の成功率を高めることに貢献できると思われた。
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