マイクロサージャリーによる血管縫合を伴う遊離組織移植をする際に、血管分岐部で主要血管を切り離す際に分枝部の近くで結紮したものと、距離をおいて結紮したものの血栓形成率を比較することを目的とした。また、主要血管を結紮せずにほかの血管と吻合することにより血流を維持するflow through型血管吻合との比較も行った。ラットの大腿動脈と下腹壁動脈の血管分岐部を使用した。まず、血管吻合を行わずに下腹壁動脈分岐部より2mm遠位側で結紮した群と分岐部より5mm遠位側で結紮した群を評価した(A群20匹)。次に、下腹壁動脈分岐部より約10mm近位部で血管吻合を行い、下腹壁動脈分岐部より2mm遠位側で結紮した群と分岐部より5mm遠位側で結紮した群を評価した(B群13匹)。さらに、下腹壁動脈分岐部より約5mm近位部と約5mm遠位部で血管吻合を行い、評価した(C群12匹)。B群、C群ではで吻合直後、30分後の開存を確認した。さらに、全群で24時間後と1週間後に再開創し、開存を評価した。さらに顕微鏡による吻合部の組織学的評価を行った。A群では、それぞれの群で20側中20側(開存率100%)に分岐部の開存を認めた。B群では、2mm離した群で20側中9側(開存率45%)に、5mm離した群では20側中16側(開存率80%)に1週間後に吻合部の開存を確認ができた。C群では、24側中14側(開存率58%)に吻合部の開存を認めた。顕微鏡による組織所見では、明らかな違いを指摘することはできなかった。血管分枝部の近くで結紮を行うために必要な剥離操作が血管の攣縮をきたしてしまい、B群における両群の開存率の差となったと思われた。flow through型血管吻合では主要血管の血流が維持されることで攣縮による影響が少なくなったため、B群の2mm離した群比べて開存率が高くなったと推測された。
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