研究概要 |
Calreticulinはほぼすべての組織の小胞体内に存在するカルシウム結合蛋白で、創傷治癒へも関わる可能性が示唆されている。Calreticulinに結合する蛋白の一つにAdiponectinがある。Adiponectinは細胞膜上のCalreticulinと特異的に結合し、アポトーシスとなった細胞の除去に関わることが発見されている。糖尿病ではAdiponectinの血中濃度が低下し、糖尿病によって惹起される様々な病態の原因となる。 これまでに私はヒト由来培養表皮細胞のHaCaT細胞に対し、Adiponectin蛋白の添加実験を行った。その結果、Adiponectin添加によりHaCaT細胞のアポトーシスが誘導されることがわかった。さらにHaCaT細胞内のmRNAを調べたところ、Adiponectin添加によってCalreticuhnの遺伝子発現量が増加することもわかった。この他、MMP1, Keratin6, IL-1Bでも遺伝子変化を確認している。表皮細胞においてもAdiponectinがCalreticulinと特異的に結合しているかどうかはまだ不明であるが、上記結果からその可能性は高いものと考えられる。 表皮は基底層から有棘層、顆粒層、角質層とTurn Overを繰り返す組織であり、これはアポトーシスの一種である。本研究により糖尿病では低Adiponectin血症からこの正常なTurn Overが阻害され、胼胝や上皮化障害がおこる可能性が示唆された。
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