研究概要 |
本研究は当施設を含めた3施設の共同研究である.研究参加施設で治療を受けた非外傷性院外心肺停止患者を対象とした無作為,前向きの観察研究である.外来を受診した912例を対象に外来受診時のアンモニア血中濃度,乳酸血中濃度が予後予測因子になりえるかを検討した.多変量解析を用いて検証した結果,28日生存をoutcomeに設定した場合のアンモニアの調整Odds比は10.6,乳酸の調整Odds比は4.15とどちらも有意差を認め,これら二つのbiomarkerは独立した予後予測因子になり得ることが分かった.なお,ROC解析の結果アンモニアの最適とされるcutoff値は170μg/dLであり,乳酸のそれは12.6mmol/Lであった.また,自己心拍再開後24時間以内の神経学的予後予測因子の有用性も検証した.入院時,発症から6時間後,発症から24時間後の血液採取検体におけるNeuron-Specific Enolase, S-100B, IL-6の血清中濃度を測定し転帰との相関を検証した.対象症例は107例であり,社会復帰例と非社会復帰例とに分けて,各biomarkerの血中濃度の経時的推移を検証した,全てのbiomarkerにおいて,非社会復帰例の血中濃度は社会復帰例の血中濃度よりも有意に高く,この結果は全ての採血ポイントにおいて認められた.それぞれのbiomarkerのpredictive powerを検証する目的でROC解析を行った結果,入院時,発症から6時間後,発症から24時間後のどの時点の採血結果においてもS-100BのAUC (area under the curve)はNSEやIL-6のそれよりも高かった,従って,蘇生後24時間以内の早期神経学的予後予測因子として,S-100Bがこれらのbiomarkerの中で最も優れている可能性が示唆された.なお,S-100Bに関して,神経学的予後不良を特異度100%で予測するcutoff値は発症後6時間で0.21ng/mL,発症後24時間で0.05ng/mLであった.
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