本研究は、ラットに盲腸穿孔術を施行することで作成する、高心拍出量敗血症ラットモデルを使用して、敗血症に対するニカラベン投与の臓器保護効果および生存率に与える影響を検討することを目的とする。このモデルは、敗血症動物モデルのゴールデンスタンダードであるが、ラットの個体差を考慮すると、侵襲のばらつきを最小限にするためには熟練を要する。ニカラベン投与の臓器保護効果および生存率に与える影響を検討するうえで、薬剤投与を行わない対象群の48時間生存率50%を目標として、盲腸穿孔術の侵襲の程度を調整した。48時間生存率がおよそ50%となるモデルを作成できるようなった段階で、ニカラベン投与の効果を検討する実験に進んだ。まず、ニカラベン投与の効果を検討する臓器として、心臓に対する効果について検討を行った。以前の我々の研究室で行った実験において、敗血症モデルの心機能が障害されていることは、すでに証明済みである。心機能評価を行う手段としては、ex vivoによる順行性摘出灌流心標本を用いた。この方法では、後負荷を一定にしたうえで、前負荷を調整することで心機能を評価できる。主な評価項目は、心拍出量、dP/dt maxおよびdP/dt min、心仕事量、心筋酸素利用効率である。心機能評価と平行して、生存率の検討も行った。現段階では、各実験に関する数匹ずつのデータが得られたところであるが、ニカラベン投与を行わない対象群とニカラベン投与を行う治療群との間に、有意差は認められていない。今後はデータ数を増やしていく予定であったが、研究者が2009年7月よりアメリカに研究留学となったため、本研究はそれ以上進んでいないのが現状である。
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