本研究では、ヒト口腔癌細胞株に対する緑茶カテキンの新規なアポトーシス誘導機構を提案することを目的とする。実験は、初めに15種類の口腔癌細胞株を使用しEGCG(epigallocatechin-gallate)への感受性を測定した。ほとんどの細胞でアポトーシスが見られたものの、3種の細胞株および対照のWI38正常細胞ではアポトーシスが誘導されなかった。続いて、高感受性株であるCa922細胞においてアポトーシスシグナルの活性化機構について解析を行った。ウェスタンブロットによる分析から、EGCG処理に伴いミトコンドリア経路とカスパーゼ8経路の双方が活性化されることが確認された。また、MAPK経路については、JNKには影響を与えずp38のみを活性化させることがわかり、これはカスパーゼ経路と同調(6hでピーク)していた。この結果を踏まえ、p38上流のシグナルとしてc-Abl経路に着目し、阻害剤およびsiRNAによるアポトーシス抑制効果を検討した。また、EGCG抵抗性の細胞株におけるアポトーシスの強制誘導についても試みている。 ところで、口腔領域においてインドの噛みタバコは発癌誘導性であることが有力視されている。本研究では、噛みタバコの主成分であるANE(areca nut extracts)を変異原として使用し、これに対する緑茶カテキンの発癌抑制効果について検討を行う。細胞として増殖が早くコロニー形成能の高いV79細胞を用い、ANEで処理後、HPRT遺伝子の変異検出系である6-TG selectionを行った。その結果、ANE 150μg/mlをピークとする濃度依存的なコロニー形成作用が見られた。今後、本系においてカテキンの発癌抑制効果を調べる予定である。
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