本年度は主に、Aurora-Aのセリン51のリン酸化・脱リン酸化動態の詳細と、その調節機構を明らかにするための検討を進めた。まず、リン酸化と脱リン酸化のタイミングを明らかにするために、HeLa細胞を用い、細胞周期同調法を応用して間期(G2期)から分裂期(M期)、そして間期(G1期)までのリン酸化状態をリン酸化特異的抗体を用いて調べたところ、G2期からM期にかけて、タンパク量の増加と共にリン酸化量が増加し、M期中期前後にそのピークを迎えた後、M期後期〜G1期に向かってリン酸化量が減少した。このタイミングは、Aurora-Aのキナーゼとしての活性のピークと一致したことから、その整合性を認めると共に、Aurora-Aによるセリン51の自己リン酸化を示唆しうるものであると考えられた。次に、セリン51をリン酸化ずるキナーゼの同定として、まず自己リン酸化について検討するために、GFPタグを付与したAurora-A発現ベクターを構築し、そのHeLa細胞内での発現を確認した。今後、今回作製したGFP-Aurora-Aに加え、FLAGタグのAurora-AやリコンビナントAurora-Aなどを用いて、自己リン酸化について検討を進めていく。次にフォスファターゼの同定として、PP2Aの関与について重点的に検討を進めた。PP2Aの足場サブユニットであるAサブユニットには、AαおよびAβがあるが、この両者のshRNAベクターを入手し、HeLa細胞に導入した後、薬剤選択を行なって、発現抑制効果の高いクローン(それぞれ、sh-Aαおよsh-Aβ)を得た。これらの細胞をnocodazoleによる同調をかけ、M期におけるセリン51のリン酸化状態を検討したところ、対照HeLa細胞と比べ、sh-Aαによって劇的にリン酸化量が増えていることがわかった。このことは、PP2Aがセリン51を脱リン酸化することを証明する有力なデータとなりうる。現在、さらなる確証を得るために、AαおよびAβの発現ベクターを構築しており、sh-AαによるAurora-Aのセリン51リン酸化量上昇を、Aαの強制発現によって抑えられるかどうかを検討する準備をしている。
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