研究概要 |
成人性歯周炎の主要病原細菌として、Porphyromonas gingivalisが知られている。我々は本菌の主たる病原因子として、強力な蛋白分解酵素であるジンジパインの解析を行ってきた。またジンジパインが外膜表面で局在化する分子機構についても解析中であり、ジンジパインが外膜に輸送される為には、PorT蛋白が必須であること、また外膜上で適切にアンカーされるためにはPorR蛋白が必須であることを報告してきた。近年、ジンジパインのC-terminaldomain(80アミノ酸)は高度に保存されており、輸送と局在化の両方に寄与していると報告されている。その報告はジンジパインに含まれるRgpB分子の解析から明らかにされている。しかしながら、RgpB分子以外のC-terminal domainを有する分子についての解析は未だない。 また、本菌は発育素としてヘムを要求する。我々は本菌のヘムの取込み機構についても解析を進めており、C-terminal domainを有しておりまた組換え蛋白がヘミン結合性を有するHBP35蛋白について解析を行い以下の知見を得た。 1. hbp35遺伝子はmono-cistronicな転写産物を産生する。 2. hbp35転写産物より、40-, 29-, 27-kDaの翻訳産物を産生する。 3. 29-, 27-kDa分子は主に細胞質内に局在する。一方、40-kDa分子はPorT依存性に外膜に輸送され、PorR依存性のシステムで外膜に局在化される。 上記の知見より、RgpB分子以外のC-terminal domainも同様な輸送・局在化機構を有することが予想される。C-terminal domainを有する分子は病原因子と関連する事から、PorTなどの輸送分子は本菌の制圧を目標とした場合の標的として、よい候補となると期待される。
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