生体内では骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収がバランスよく行われており、骨粗霧症などは骨吸収にバランスが傾くことが原因となっている。本研究では1) 脂質代謝と骨代謝に相関が示されていること、2) 閉経後の女性ではコレステロール値が上昇しやすく骨粗霧症に罹患するリスクも高くなること、3) 高脂血症治療薬であるスタチン系薬物は骨形成を促進・骨吸収を抑制すること、などから、コレステロールが破骨細胞分化に及ぼす影響について解析を行った。 細胞膜マイクロドメインであるカベオラの裏打ちタンパク質Caveolin-1のノックアウトマウスおよびコレステロールを含むLDLの細胞内取り込みを行うLDLRノックアウトマウスを用いて、これらの遺伝子欠損の破骨細胞形成への影響を解析したが、大きな異常は見られなかった。他のファミリー遺伝子などによる相補が行われている可能性が考えられる。 破骨細胞の分化時にコレステロール除去血清を用いると破骨細胞分化がほぼ完全に阻害されること、この時サイトカインRANKL刺激による下流シグナル分子の活性化に異常が見られることが明らかとなった。コレステロールは細胞膜のラフト・カベオラに多く含まれており情報伝達の調節に関与していると考えられているので、シクロデキストリンによるラフト破壊実験を行ったところ、上記と同様の異常が見られた。破骨細胞の分化の過程でカベオラの裏打ちタンパク質Caveolin-1の発現が誘導され、速やかにラフト・カベオラに移行することも合わせると、破骨細胞の分化にともなって細胞膜マイクロドメインに変化が起こり、おそらくは受容体分子やアダプター分子などの局在変化によって正常な分化に必要なシグナルの調節が行われているものと考える。 なお平成21年10月に鹿児島大学に異動し、研究環境のセットアップなども行った。
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