研究概要 |
歯科矯正治療のように骨に圧力刺激を加えると骨の吸収や新生と言った骨リモデリングが起こることがよく知られている。しかしながら個々の細胞内における機械刺激の受容メカニズムは未だよく解明されていない。本研究は骨芽細胞において発現している機械刺激受容陽イオンチャネルの分子的実態を明らかとするとともにそのチャネルの活性化機構を電気生理学的手法、分子生物学的手法を用いて解明することを目的とした。マウスの骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞を用いてRT-PCR法により発現しているTRP(transient receptor potential)チャネルを調べたところTRPV,TRPM,TRPPなどのサブファミリーに属する多くの種類のTRPチャネルが発現していることが明らかとなった。さらに細胞内Ca^<2+>インジケーターであるfura-2を用いて、MC3T3-E1に機械的刺激を加えたときの細胞内Ca^<2+>濃度変化を測定したところ20%の伸展刺激により細胞内Ca^<2+>濃度は上昇し、このCa^<2+>上昇は細胞外液からCa^<2+>を除去すると生じなかったことから細胞外からのCa^<2+>流入により引き起こされていることが明らかとなった。MC3T3-E1に発現しているTRPチャネルの多くは機械的刺激に応答性があることが報告されているので、機械的刺激による細胞外からのCa^<2+>流入はTRPチャネルを介して行われていると考えられる。今後は様々な機械刺激に対してどのタイプのTRPが応答するかといった情報伝達のメカニズムを解き明かし、より高次な細胞間ネットワークによる新規な機械受容システムの全容を明らかとする。
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