近年、骨吸収疾患の病態と免疫系細胞の異常が関連することが明らかになりつつあり、特にT細胞の機能変化と破骨細胞形成制御のメカニズムに注目が集まっている。 我々の研究グループはT細胞活性化抑制補助シグナル分子であるPD-1の遺伝子欠損マウスの表現型解析を行い、自己免疫疾患様症状と骨量の増加を認めた。また、破骨細胞数の減少を認め、PD-1が骨吸収に関与していることが推察された。これらの研究成果から、PD-1は破骨細胞形成において正の制御因子として機能していることが推測された。また、RNAアプタマーは核酸医薬品として注目されており、標的分子に特異的に結合するRNAである。これを応用することによって、より効果や安全性の高い新規薬物の開発が可能であると期待される。 そこで本研究は、PD-1分子が炎症性骨吸収に関与していると仮説をたて、PD-1/PD-L1シグナル制御が炎症性骨吸収を抑制する薬物ターゲットとなる可能性の探索をはじめた。まず、マウス頭蓋骨に細菌毒素であるLPS投与によって炎症性の骨吸収を起こし、炎症性骨吸収モデルを作成した。そのマウスから脾臓細胞および骨髄細胞を採取し、破骨細胞の誘導を行った。また、試験管内人工進化法を用いてRNAアプタマーの作製を試みている。 本研究によってPD-1を特異的に抑制するRNAアプタマーが開発されれば、炎症性骨吸収機構におけるT細胞による破骨細胞活性化メカニズムを抑制できる可能性があり、新しい機能分子をターゲットとした新規核酸医薬品を設計する上で基礎的情報価値があると考える。
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