3年間の実験計画の2年度に当たる本年度では、昨年度に確立した本研究計画に用いる遺伝子改変マウスであるNT-4/5ノックアウトマウスの個体を用いて、その個体が有するBehaviorの記録を中心に行った。まず、8週齢を超えるWild-Typeの個体における摂食行動を中心としたBehavior記録では、研究代表者が有する近交系の個体から得られたデータと比較して大きな相違はなかった。これに対して、ホモの個体を用いてのBehavior記録では、全体の摂食量や行動量に差があるものの、摂食行動特に咀嚼運動の各要素(運動軌跡や筋活動量)には大きな相違は見られなかった。NT-4/5ノックアウトマウスは、歯根膜の感覚受容器の発現・成長に大きな影響を及ぼすものの、7-8週齢にはWild-Typeの個体と同程度に復旧するという解剖学での研究結果と一致する。そこで、4週齢のホモの個体を用いて摂食行動を中心としたBehavior記録を行うこととした。しかしながら、4週齢の個体は慢性実験系に耐えうる体力を有しておらず、装置装着の小手術後からの回復に時間を有した。その中で得られたデータから、咀嚼運動の要素のうち、運動軌跡には差異が認められなかったが、マウスが本来有する両方向性の咀嚼運動が明確に記録されず、片側性またはイレギュラーな左右側での咀嚼運動が記録された。このことは、咀嚼運動を構成する因子のうち、歯根膜からの感覚情報が運動構成に重要であるという過去の知見と一致する。また、筋活動様式は側方運動に関連する要素以外に差異は認められなかった。このことから、咀嚼運動を構成する因子のうち、歯根膜が重要な感覚情報を提供するソースであるが、生体はある程度まではその感覚情報が失われた段階でも、筋紡錘などの情報を中心に、一連の運動を再構成する可能性が示唆された。
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