研究課題
味覚情報が味細胞から味神経へと伝達される際、その主要な神経伝達物質はATPと考えられている。味細胞の中で、甘味、苦味またはうま味受容体が発現する味細胞にはシナプス小胞が観察されない等、味神経への情報伝達機構が不明であった。昨年度の本研究において、味応答とその神経伝達物質放出量を、同一味細胞から単一細胞レベルで記録・測定する技術を確立した。その上で、甘味、苦味もしくはうま味刺激に応答する味細胞からも、刺激に応じてATPが放出されること、その放出量は味細胞が発生する活動電位の頻度に依存すること、さらにはヘミチャネルにも依存することを明らかにした。本年度は、まず記録測定技術の改良により、同一味細胞から複数回の味応答記録およびATP放出量測定を可能にした。そこで、味細胞からの神経伝達物質・ATP放出における活動電位の機能的役割を薬理学的に解析した。その結果、ヘミチャネルのプロッカーであるカルベノキソロン存在下では、味細胞のATP放出は濃度依存的に抑制され、5μMという低濃度で検出限界以下となった。一方、電位依存性Naチャネルのブロッカーであるテトロドトキシン(TTX)存在下でも、味細胞からのATP放出は抑制されたが、活動電位が全く発生しないTTX濃度においても完全には抑制されなかった。以上の結果をこれまでの味細胞における細胞内情報伝達機構の研究と照らし合わせると、味細胞は味刺激によって生じる一過性の細胞内Ca^<2+>上昇によってヘミチャネルが開口することでATPを放出するが、味細胞が発生する活動電位はそのシグナルを増幅する役割があることと考えられる。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
Neuroscience 159
ページ: 795-803
Comparative Biochemistry and Physiology Part A 153
ページ: 309-316
The American Journal of Clinical Nutrition 90
ページ: 747-752
The Journal of Physiology 257
ページ: 4425-4439
Annals of the New York Academy of Sciences 1170
ページ: 51-54
ページ: 102-106