研究概要 |
C57BL/6マウス新生仔の頭頂骨由来骨芽細胞を採取し、ビタミンCとβ-glycerophosphateを含む骨芽細胞分化培地にて培養し分化を誘導した。その際に、GSK3・阻害剤であるSB216763を0、2.5、10・Mの濃度にて添加し、各分化段階におけるオステオカルシンなどの骨芽細胞分化マーカー分子または細胞内シグナル分子の発現量の比較、骨芽細胞による石灰化の検出を主として解析を行った。 骨芽細胞の各分化段階において、SB216763処理により細胞内β-cateninが増大した。また、MAPキナーゼの1つであり、骨芽細胞分化の後期段階に関与することを報告した(Matsuguchi T, Chiba N, et.al. JBMR 2009)JNK1/2も増大していた。また、分化マーカーであるが石灰化を抑制するオステオカルシンはSB216763の濃度依存的に減少していたが、これに反して石灰化を促進するオステオポンチンは著明に増大していた。さらにアリザリンレッド染色を用いて石灰化を検出したところ、SB216763により骨芽細胞の分化・成熟にはやや遅れが見られるが、石灰化作用により生じるスポットの大きさは濃度依存的に増大していた。頭頂骨由来骨芽細胞にはある程度分化が進んでいる細胞も含まれていることから、SB216763の処理により未熟な骨芽細胞の分化は遅延するが、一定の分化段階に達している骨芽細胞による石灰化を強力に促進する可能性が考えられる。成熟個体においては、ある程度分化が進んだ骨芽細胞がマウス新生仔の頭頂骨に比較して多く存在すると考えられ、GSK3シグナルの解明が骨破壊による損傷・疾患の治療などに役立つことが期待される。
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