腫瘍局所へのヘルパー1型T細胞の動員はIFNγにより誘導されるケモカインMig/CXCL9およびIP-10/CXCL10が関与している。一方、腫瘍の増大に伴い酸素供給が抑制された腫瘍細胞は低酸素状態に陥る。これまでに口腔扁平上皮癌細胞における低酸素状態がCXCL9およびCXCL10遺伝子の発現を抑制すること、またこの遺伝子発現の抑制がIFNγにより活性化される転写因子STAT1シグナル伝達経路の抑制ではなく、コアクチベーターやRNAポリメラーゼIIを含むエンハンセオソームの形成阻害によることを明らかにした。STAT1依存的転写活性は、STAT1 のチロシン残基(Tyr 701)のリン酸化だけでなく、セリン残基(Ser727)のリン酸化も関与している。そこで本研究課題では低酸素によるIFNγ誘導性遺伝子発現抑制にSTAT1 Ser 727リン酸化が関与しているかについて検討した。その結果、低酸素によるSer727のリン酸化の抑制は細胞特異的であること、またSTAT1のSer727をGluに変異させた細胞でも低酸素によるCXCL9およびCXCL10の発現抑制は解除されないことが明らかとなった。これらの結果から、低酸素によるIFNγ誘導性遺伝子発現の抑制にSTAT1 Ser 727リン酸化は関与しない可能性が示唆された。
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