研究課題
免疫応答を担うマクロファージは骨吸収を担う破骨細胞と抗原提示能を担う樹状細胞へと分化することが知られている。これらの細胞の分化は、それぞれ破骨細胞分化誘導因子であるTRANCE(=RANKL)、樹状細胞分化誘導因子であるGM-CSFによって誘導される。しかし、これらのサイトカイン以外にも分化を振り分けている分化調節因子が存在するといわれている。以前の報告で、破骨細胞の分化にはTRANCEとM-CSFの他に細胞接着が必須であることが明らかとなっているが、細胞接着が破骨細胞分化にどのような影響を及ぼすのか、詳細なメカニズムはまだ解明されていない。そこで申請者は、破骨細胞分化における細胞接着の役割を解明することにした。マクロファージを、細胞培養用のプラスチックプレート上(接着状態)およびメチルセルロース培地上(非接着状態)で培養し、破骨細胞分化、細胞内シグナル、RANK mRNAの発現を検討した。マクロファージを接着状態で培養するとTRANCE刺激によって効率よく破骨細胞に分化した。しかし、非接着状態では破骨細胞への分化効率が著しく低下した。接着状態にあるマクロファージをTRANCEで刺激すると、NF-kB経路が活性化されたが、非接着状態ではそれが起こらなかった。接着状態にあるマクロファージは一定レベルのRANK mRNAを発現していたが、非接着状態に移行すると、速やかにその発現レベルが低下した。また、マクロファージにRANKを強制発現させると、非接着状態でも破骨細胞に分化した。以上の結果から、接着シグナルは分化前のRANKの発現誘導に必要と思われる。しかし、非接着状態に移行するとRANKの発現が低下し、破骨細胞への分化が困難になると予想される。また、いったんRANKからのシグナルが入るとRANK自身の発現が誘導されるため、非接着状態でも分化が可能になるのではないかと推察される。
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Neuroscience 166
ページ: 1008-1022
Tissue Engineering, Part A 15
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