研究概要 |
本研究はラット分泌刺激後,新しく分泌顆粒様構造物が耳下腺腺房細胞の管腔側付近に観察されることから,「耳下腺にはアミラーゼを管腔側から取り込む一時的な分泌顆粒形成機構が存在する。」という仮説を建て,研究を開始した。ラット腹腔にイソプロテレノール投与を行ない,唾液分泌を促進させた後,新しく形成される顆粒様構造物をパーコール遠心法にて分離した。アミラーゼを含む分画に精製された分泌顆粒を電子顕微鏡により確認した。刺激5時間後の分泌顆粒を無刺激時の分泌顆粒と比較検討すると,比重は軽く,直径は約0.5μmと無刺激時の約半分であった。さらに膜タンパク質組成はシンタキシン6やVAMP4が濃縮するという未成熟顆粒の報告とほぼ一致しており,この新しく形成された顆粒が未成熟顆粒であることが明らかとなった。つづいて,未成熟顆粒の形成機構にエンドサイトーシスが関与しているのかどうかを確かめるため,刺激2時間後の分泌顆粒が枯渇した状態の耳下腺を摘出し,蛍光色素であるルシファーイエロー含有培養液中にて培養を行った。培養3時間後,分泌顆粒を精製し,0.1%のTritonX-100にて内容物を検査すると,その中からルシファーイエローの蛍光が検出された。さらに,培養後の耳下腺腺房細胞をカラムパーフユージョンシステムに適応させ,刺激時の時間ごと分泌を測定すると,アミラーゼ分泌とほぼ一致してルシファーイエローが検出された。ルシファーイエローは膜には結合しないことから,この結果はエンドサイトーシスによりルシファーイエローが未成熟顆粒内に取り込まれたことを示唆している。本研究の結果は未成熟顆粒の形成にエンドサイトーシスが関与していることを示しており,これまで困難であった分泌顆粒の可視化を期待させるものである。また,オルガネラの形成機構という視点から見ても新しい知見が得られたと考えている。
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