研究概要 |
本研究はケラチノサイト表現型の確立に重要なIKKαに関する未知の分化誘導因子の特定とその機能解析を行った。 IKKαと同じく口腔扁平上皮癌で高頻度に発現を停止するMucosa-associated lymphoid tissue 1 (MALT1)に着目し、発現停止機構と癌細胞の表現型に与える影響について検討した。その結果、MALT1プロモーターは転写開始点から256bp下流のシトシンのみが特異的にメチル化され、それが発現停止の原因であることが明らかになった。(Cancer Res 2009; 69: 7216-7223)。 未知の分化誘導因子の特定には、効率良く目的遺伝子の絞り込む事が重要である。申請者は細胞内でゲノム上に結合している転写因子あるいは転写共役因子の遺伝子を未知、既知に関わらず網羅的に同定する方法(conChip; concatenate Chip)を確立した。その方法を用いてT細胞の分化決定に重要な因子であるGATA3について網羅的検索を行い、121のGATA3結合領域から、81種類の結合遺伝子を同定した。その結果、GATA3がコアプロモーターに直接的に結合することにより、標的遺伝子の発現を制御することが示唆された(Gene 2009; 445: 17-25)。 本研究において、英文原著論文2編(Gene 2009, 445: 17-25, Cancer Res 2009, 69: 7216-7223)総説3編(Mini Rev. Med, Chem. 2009,9: 318-323, Trends Cancer Res. 2009, 5; 13-19,歯学2009 97,秋季特集号95-101)を発表し、学会賞(歯学会学術奨励賞)を受賞した。IKKαを含めNFκBに関連する分化誘導因子を特定し、今後の治療や研究の発展に貢献した。そして本研究の重要性を示した。
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