本研究は、予防的頸部郭清を行なわない舌癌cNO症例を対象とし、手術前に個々の症例ごとに異なるリンパ流の経路を明らかにし、後発転移のリスクの高いリンパ節(以下高リスクリンパ節)を同定し、高リスクリンパ節がどのような変化をするかを検討することにより、個々の症例にあわせた画像診断を考案することを目的として行なった。 平成20年度は、新潟大学医歯学総合病院歯科で手術を受ける舌癌cNO症例のうち、本研究の趣旨や内容などについて十分な説明を行い、同意をいただいた患者様6名に対して、CTリンパグラフィーを施行した。撮影後にワークステーション上で多方向から観察し、原発巣から連続して造影剤増強効果のみられたリンパ管とリンパ節を同定し、術後に重点的な経過観察を行なう高リスクリンパ節とした。全ての症例で高リスクリンパ節の同定が可能であった。全ての症例の高リスクリンパ節は原発腫瘍と同側であり、反対側に検出された症例はなかった。同定された高リスクリンパ節の個数は、5例が1個であり、1例が2個だった。高リスクリンパ節の部位は、4例が上内頸静脈リンパ節、2例が顎下リンパ節だった。術後の経過観察は1ヶ月に1回程度の間隔の超音波検査を行なった。平成21年年4月現在で経過観察期間は2ヶ月から6ヶ月となっている。6症例中1例で、経過観察2ヶ月目で後発転移が生じた。その他の症例においては、現時点で後発転移はみられず、引き続き超音波検査による経過観察を行なっていく予定である。平成20年度に得られたデータは症例数が少ないものの、症例ごとに異なる高リスクリンパ節を確認した上で経過観察を行なうことが可能となった。また今後、舌リンパ節、顎下腺深部などに局所再発かどうか判断に苦慮する所見が現れた場合も、症例ごとのリンパ流を把握しているためにより確実な診断、治療方針の決定につながり、非常に有益であると考えられた。
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