研究概要 |
MMPsは従来、組織のリモデリングを担う細胞外タンパク質分解酵素として知られてきた。ところが最近、核内よりMMPsが検出される例がいくつか報告された。中でも、代表者らは核内MMP3が転写因子としてCTGF/CCN2の発現を調節するという斬新な概念を示した(Eguchi et al, MCB, 2008)。本研究課題では、分子間相互作用に着日してMMP3の核内での新機能を探った。 具体的成果として、MMP3と核内で相互作用する分子を複数同定した。核抽出液を抗MMP3抗体で免疫沈降後、質量分析装置(LC-MS/MS)により網羅的同定を行った。とりわけHP1GとMMP3とが強く相互作用することは紙上発表済みである(Eguchi et al, MCB, 2008)。核内MMP3相互作用分子をNuclear MMP3-associated proteins (NuMAPs)と名付けた。そのうち、CNOT4とMLL5に着目している。これらはヒストンメチルトランスフェラーゼ活性をもつとされている。このことは、この分子間相互作用がヒストンのメチル化を介してCTGF/CCN2の遺伝子発現に影響することを示唆している。 さらに、MMP3の感染制御における役割を明確にするために、マクロファージおよび血管内皮細胞におけるMMP3の発現を定量した。内皮細胞(HUVEC)は内毒素(LPS)に応答してMMP3を産生した。また、マクロファージをTNFαおよびバルプロ酸で刺激するといずれもMMP3を産生したが、その動態(分泌の有無)が異なった。 このようなMMP3の分子動態および核内MMP3による新規の遺伝子発現制御機構は、慢性炎症および組織の再生にとって重要な意味を持ち、歯周病や慢性関節リウマチの治療に役立つものである。
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