研究概要 |
20年度において材料から溶出するフッ素の溶出様式について、検討を重ね、21年度では、材料から溶出するフッ素の歯質への浸透について研究を進めた。そこで22年度は、材料を保存する条件を変え、フッ素が外部から供給される状況でのう蝕進行抑制や、再石灰化の変化を観察、検討した。また最近、当研究の目的に沿った、再石灰化を促進することが考えられる歯根面へのコーティング材が歯科材料メーカーより試作されたことから、この材料を中心に検討を行った。 歯根面を想定し、象牙質を露出させた試料を作製した。試料の一部分を酢酸緩衝液にて脱灰させ、人工的にう蝕部分を作製した。そのう蝕部分に試作品の再石灰化促進コーティング材、フッ素徐放性を有するボンディング材、フッ素を含まないボンディング材を作用させ、一定期間ほぼ中性の溶液(再石灰化溶液)に浸漬、保存した。また、一方で、再石灰化溶液に10ppmF相当のNaFを添加した溶液にも同様に試料を保存した。その結果、フッ素を含まない溶液に保存した場合、フッ素を含む試作コーティング材は、フッ素を含むボンディング材やフッ素を含まない材料を使用した群と比較して,材料に隣接する歯質の再石灰化度が有意に高いことが示された。さらにフッ素を添加した溶液に保存した場合でも、フッ素を含む試作コーティング材は他の材料と比較して高い再石灰化度を示す傾向にあった。このことより、フッ素含有試作コーティング材はう蝕進行抑制効果が期待できることが示された。 また、歯科材料の象牙質接着とフッ素との関連性を検討したところ、高濃度のフッ素溶液を作用させた場合、高い接着強さを示した。そこで接着界面の元素分析を行ったところ高い接着強さを認めた群では、接着界面に多くのフッ素イオンの存在が認められた。このことから、フッ素溶液による処理が接着に影響を与えることが示唆され、う蝕進行抑制にも関わるものと推測された。
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