研究課題
本研究の目的は、象牙質コラーゲンナノスペースを利用し、新しい接着システムの開発を行うことであり、レジン-象牙質接着の劣化を防ぐことにもつながると期待される。本年度は、接着性レジンと象牙質コラーゲンの親和性の検討を行うため、ボンディング材の親水性に着目し、ボンディング材の吸水実験を行った。さらに修復治療後の予後に影響を与えると考えられるため、ボンディング材の機械的性質と吸水との関係に関する実験を行った。具体的には、5種類のワンステップのセルフエッチングボンディング材を用いて重合硬化体を作製し、実験試料として使用した。機械的性質として、弾性係数と引っ張り強さを3点曲げ試験と引っ張り試験によって測定した。吸水後の試料の弾性係数と引っ張り強さはともに、すべてのボンディング材で有意に低下していた。HEMA含有のボンディング材はHEMAフリーのボンディング材と比較し吸水量の増加傾向を示したが、統計学的にはボンディング材ごとに吸水量が異なるということが判明した。吸水量と引っ張り強さの減少率の間には正の相関が認められ、ボンディング材硬化体の吸水が機械的性質に与える影響が認められた。ボンディング材の親水性は象牙質へのぬれを向上させるが、吸水を招き硬化したボンディング材の物性が劣化する。臨床においては直接的にレジン-象牙質接着の失敗につながるため、更なる研究が必要であると考えられる。以上の考察は、特にコラーゲンスペースに存在する物質(水や組織液)との検討を行っていく上で有意義であると考えられ、次年度は研究実施計画に従って、pH勾配や電気的勾配を利用しボンディング操作を工夫したり、接着性レジンの工夫をしたりすることによって、接着性レジンと象牙質コラーゲンやコラーゲン間隙物質との相互作用を高め、コラーゲンナノスペースへの修飾やレジン浸透を促進させるための実験を行う予定である。
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Journal of Dental Research 88
ページ: 146-151
日本歯科保存学雑誌 51
ページ: 396-401