研究課題
ボンディング材の吸水は、加水分解だけでなく、象牙質コラーゲンの加水分解やMMPの活性化を招き、長期耐久性に影響を与える。前年度までの研究から、ワンステップ接着システムの吸水はその機械的強度を有意に低下させ、その吸水量は機械的強度の低下と相関を示すことがわかった。本年度の研究では、ワンステップ接着システム硬化体に含まれている残存溶媒を、熱分析試験およびカールフィッシャー滴定試験を用いることにより定量的に測定した。残存溶媒は、ボンディング材の重合率を低下させるだけでなく、吸水性を増加させる原因ともなりボンディング層の機械的強度の低下を招くと考えられる。溶媒の揮発性は溶媒の種類、粘性、エアブローの方法により影響を受けるが、ワンステップ接着システムでは水が有機溶媒よりも多く残存し約1~3wt%程度であることが明らかとなった。溶媒の徹底的な除去は疎水性の接着界面・ボンディング層を作るために必要である。一方、新規接着システムとして、機械的性質を向上させる二官能の親水性モノマーと分子構造に水酸基を全く含まない疎水性のモノマー、および重合率の向上を期待して配合された新しい光重合触媒を持つワンステップ接着システムについて、接着試験と吸水性試験および3点曲げ試験を行った。その結果、新規接着システムは従来システムと比較し有意に高い接着強さと低吸水性による弾性係数の低い減少率を示すことがわかった。新しい接着システムではフィラー配合量を調整し低粘度であるため、効率的に溶媒の除去が可能になることが期待される。象牙質コラーゲンの持つ様々なナノスペースをレジンで安定的に修飾し規則的に配列した象牙質コラーゲン分子がより高い機械的強度を持ったレジンとの複合体を作るためには、このように強度が高く安定したボンディング層を作るだけでなく、象牙質コラーゲンの改質とその性状のより詳細な検討が今後必要である。
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Dental Materials
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