研究概要 |
本研究では、歯髄炎における自然免疫機構の役割を解明することを目的とし、第一段階として培養, 歯髄細胞における自然免疫に関与するレセプター(PRR ; TLR-2, TLR-4, NOD-1, NOD-2)の発現をRT-PCR法を用いて解析した。その結果、無刺激条件下において、培養歯髄細胞に全てのPRRのmRNA発現が認められた。またFACSにより各レセプターの蛋白発現を解析したところ、TLR-2, NOD-1, NOD-2の顕著な発現が認められたが、TLR-4の発現レベルは弱かった。また、Streptococcus mutansで刺激した場合のPRR発現状態も同様に解析したところ、刺激24時間後において、TLR-2とNOD-2でmRNA発現の増加が確認されたが、TLR-4, NOD-1のmRNA発現には変化は認められなかった。また、FACSにおいてもTLR-2, NOD-2の蛋白発現の増加が認められた。次にPRRを介する歯髄の反応を解析するために、培養歯髄細胞をS.mutansならびに各PRR特異的なligandにて一定時間刺激し、培養上清中のIL-8濃度をELISA法にて測定した。その結果、歯髄細胞培養上清中のIL-濃度は、S.mutans単独刺激においては刺激48時間後からIL-8濃度の上昇が確認され、NOD-2のligandであるMDP、TLR-2のligandであるPam3CSK4、TLR-4のligandであるLPS刺激ではいずれも刺激8時間後からIL-8濃度が上昇した。さらに、MDPとPam3CSK4の共刺激では、培養上清中のIL-8濃度はそれぞれ単独で刺激した場合と比較して相乗的に上昇した。しかし、MDPとLPSにて共刺激した場合では相乗的な効果は認められなかった。現在、抗菌物質(カテキンなど)の自然免疫機構におよぼす影響について検討中である。
|