研究概要 |
根管治療において、根管拡大の途中および終了後に行なう化学的洗浄操作は、壊死物質や象牙質削片などの根管内容物の洗浄、根管拡大用インスツルメントが接触できない部位の清掃、更には、機械的拡大操作によって根管壁に形成されるスミヤー層の除去、を主な目的として実施される。一般的には、これらの化学的清掃剤は専用シリンジを用いて根管内に応用されるが、その洗浄効果は、使用する洗浄針の形状や洗浄液の作用時間・量・温度などによって大きく影響されると考えられる。そこで、根管内殺菌・洗浄を目的として使用されるNaOClなどの化学的清掃剤の作用をレーザーを用いて増強させることが可能かどうか検索した。 効果的な洗浄には、根管内においてレーザーを照射することで生じる対流パターンを解析する必要があるため、模擬根管模型を用いた実験モデルを構築した。すなわち、実体顕微鏡(Stemi2000C : Carl Zeiss社製,ドイツ)に高速度デジタルカメラ(HAS-220M : DITECT社製)を装着し、出力端子をPC (Workstation T3400 : Dell社製,USA)に接続した。更に、カメラのレンズから10cmの位置にガラス製セルを設置し、Er:YAGレーザーに、根管内照射用円錐型チップ(内径400μm)(R400T:モリタ社製)、または、う蝕除去用の先端が平坦なチップ(内径400μm)(C400F:モリタ社製〉を装着し、チップ先端がセルの底部から10mmの位置になるように固定した後、トレーサーとして直径約50μmのガラスビーズを含む蒸留水をセル底部から15mmの位置まで注入した。レーザー照射条件として、注水およびエアー無しで、30mJ、50mJ、70mJの各表示出力、10ppsおよび20ppsの繰り返し速度で照射を行った。照射中にチップ先端周囲に生じる流体を動画で撮影記録した。 その結果、チップ形状と出力エネルギーの違いにより流体および流速が異なることが分かつた。今後さらに、拡大・形成済みの象牙質根管内においてレーザー照射を行い0洗浄効果が増強されているかを走査型電子顕微鏡にて観察する必要がある。
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