研究概要 |
前年度の研究で得られたフィッシュコラーゲン(FC)を添加した培養下でのヒト骨芽細胞(NOS-1細胞)における石灰化関連遺伝子のmRNAレベルでの発現結果に基づき、本年度は蛋白レベルでの発現をWestern Blotting法で確認した。その結果、培養3日目ではオステオカルシン、オステオポンチン、BMP-2、インテグリンβ3の発現は、FCを添加しない培地で培養したコントロール群と比較して、それぞれ、3.3,1.8,2.7,1.5倍、培養7日目には、1.3,1.1,0.7,1.5倍の発現を示した。以上のように、培養3日目にはreal-time PCR解析結果と一致する石灰化関連蛋白の発現増加を認めたが、7日目にオステオカルシンとBMP-2の発現が減少した。その理由としては、過剰に分泌された同蛋白質がオートクリン的にネガティブフィードバック機構を活性化させたものと考えられる。次に、長期培養におけるFCの骨芽細胞への影響を検討するために、培養7,14,21日後に10%ホルマリン液で固定後、通法に従って、von Kossa染色を行い、光学顕微鏡にて石灰化物の形成状況を観察した。その結果、コントロール、FC群ともに培養期間中、石灰化物の沈着を認めたが、FC群の方が、石灰化塊の形成が早いことが明らかとなった。FCと同濃度のカゼインペプチド(CP)を含有した培地を用いたin vitroの実験では、培養3日目における骨芽細胞のアルカリフォスファターゼ活性をコントロールおよびFC群と比較したところ、CP群ではその上昇を認めなかったことを確認している。以上の結果より、単に培地中にアミノ酸増加により栄養源が増えたことで石灰化が亢進したわけではなく、FCが骨芽細胞の石灰化関連遺伝子に積極的に作用することにより、長期培養においても石灰化を促進する可能性が示唆された。
|