アディポネクチン(AD)は脂肪細胞より豊富に分泌される血中ホルモンで、AD受容体1(AR1)および2(AR2)を介して血糖値の調節に重要な役割を果たすことで知られている。本研究では、ADの歯髄保存療法剤としての有用性を調べる目的で、ラット歯髄細胞におけるADの機能を検討した。RT-PCRの結果、歯髄細胞においてAR1とAR2のいずれの発現も認められた。さらに、ウエスタンブロット法により歯髄細胞においてAR1のタンパク質発現が見られた。ADの石灰化能への影響をアリザリンレッド染色により検討したところ、培地中への10 μg/ml AD添加により12日後の石灰化結節の形成は有意に促進された。また、歯髄細胞のAD処理により象牙質形成関連遺伝子であるDSPP発現が8日目に誘導されたが、コントロールの細胞では発現が検出できなかった。以上の結果より、ADは歯髄細胞のDSPP発現を誘導することで石灰化を亢進する働きがあることが示唆された。
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