本研究では歯根膜を除去した際の再植歯の歯根面処理にビスホスホネートを応用した際のin vitroでの象牙質吸収抑制能力を吸収窩の面積とその形態観察により数種の薬剤と比較検討した。さらにセメント質での効果についても検討した。 直径6mmの象牙板を試料とした。実験群は、蒸留水に20分浸漬したControl群、pH=7.4の15%EDTA水溶液に20分浸漬した群、pH=5.5の2.4%フッ化ナトリウム水溶液に20分浸漬した群、ビスホスホネート製剤として1mMパミドロン酸二ナトリウム水溶液20分浸漬した群および1mMパミドロン酸二ナトリウム24時間浸漬した群であった。試片を各浸漬液に浸漬した後、その上に破骨前駆細胞を播種し、14日間培養した。実験期間終了後、試片に形成された吸収窩の面積を計測した。牛歯セメント質にも1mMパミドロン酸二ナトリウムを用いて同様に破骨細胞を培養後、セメント質を観察した。 吸収窩の面積は、フッ化ナトリウム群、パミドロン酸ニナトリウム20分群およびパミドロン酸ニナトリウム24時間群の3群間には、統計的有意差が認められなかった。これら3群はコントロール群およびEDTA群に比較し有意に小さな値を示した。また、EDTA群はControl群に比較し有意に大きな面積を示した。牛歯の歯根から作製した象牙質板とセメント質板では無処理のコントロール群では象牙質に較べセメント質でTRAP陽性細胞も吸収窩の形成も少なく、ビスホスホネート群では象牙質、セメント質ともにTRAP陽性細胞も吸収窩の形成もほとんどみられず、特にセメント質では皆無だった。 以上のことよりパミドロン酸二ナトリウム群にフッ化ナトリウム群と同等の象牙質吸収抑制効果があることが示された。またセメント質においても効果を示すことがわかった。
|