炭酸ガスレーザーは、10.6μmの波長を示すハードレーザーで、その出力によって組織や細胞を活性化するLLLT作用と、組織を蒸散させるHLLT作用を有する。近年、歯周治療やインプラントを用いた療法においてLLLT作用を応用し、歯槽骨の再生を行う試みがなされている。しかしながら、細胞レベルでのエビデンスが少ないまま治療が先行してしまっている感は否めない。我々は炭酸ガスレーザー照射をメカニカルフォースと捉え、その照射により脛骨の骨髄側に骨形成を誘導すること、それには骨細胞の存在が重要であること、そして形成された骨はやがて吸収されてしまうことを報告してきたが、これをインプラント治療に応用できないかと考えるに至った。そこで、10週齢のメスSDラットを用い、A群は右脛骨にレーザー照射を行った後、インプラント埋入を行い、左脛骨にはレーザー照射のみを行った。B群は右脛骨に疑似手術を行い、左脛骨にはインプラントの埋入を行った。埋入後、7日~21日で試料の回収し、固定後に軟エックス線撮影を行った後、脱灰しパラフィン切片を作製、ヘマトキシリンエオジン(以下H-E)染色を行い観察した。その結果、炭酸ガスレーザー照射により脛骨骨髄側に誘導された骨は、早期にオッセオインテグレーションを獲得するという結果を得た。このような基礎的な知見を積み重ねることにより、物理的刺激を応用した新たなインプラント埋入法の確立が可能になると考えられる。したがって、今回の研究成果は非常に意義のあるものである。現在、成果を国際誌に投稿中である。
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