(1) 歯胚と唾液腺は、口腔上皮由来という共通の発生由来を有する器官としてだけではなく、上皮間葉相互作用により形態形成が行われ、生体においても口腔領域の環境構築という上では密接な関連性を有している組織である。歯の発生において重要な関与を示すと言われているHomeobox遺伝子の一つであるBarx遺伝子群が唾液腺の発生にどのように関与するかを検索する目的で実験を行った。その結果、複雑な形態を有する唾液腺組織の形態形成機構にHomeobox遺伝子が重要な役割を果たすことが示されただけでなく、唾液線組織の形態形成機構の解明に対して重要な知見となるものと考えられる。このような基礎的な知見の積み重ねにより、唾液線組織、ひいては口腔諸組織の再生医療が実現可能になるものと考えられる。したがって、今回の研究成果は非常に意義のあるものである。 (2) 炭酸ガスレーザーは、10.6μmの波長を示すハードレーザーで、その出力によって組織や細胞を活性化するLLLT作用と、組織を蒸散させるHLLT作用を有する。近年、歯周治療やインプラントを用いた療法においてLLLT作用を応用し、歯槽骨の再生を行う試みがなされている。しかしながら、細胞レベルでのエビデンスが少ないまま治療が先行してしまっている感は否めない。我々は炭酸ガスレーザー照射をメカニカルフォースと捉え、その照射により脛骨の骨髄側に骨形成を誘導すること、それには骨細胞の存在が重要であること、そして形成された骨はやがて吸収されてしまうことを報告してきたが、これをインプラント治療に応用できないかと考えるに至った。その結果、炭酸ガスレーザー照射により脛骨骨髄側に誘導された骨は、早期にオッセオインテグレーションを獲得するという結果を得た。したがって、今回の研究成果は非常に意義のあるものである。現在、成果を国際誌に投稿中であり、新たなインプラント埋入法の開発が期待される。
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