研究概要 |
光重合型レジンをはじめとする審美性修復材料は,それぞれ優れた材料ではあるが,臨床的な寿命は短く,10年以内に再修復処置という転帰をとっている。そこで,光重合型レジンあるいは光硬化型グラスアイオノマーセメントなど審美性修復材料の表面摩耗,辺縁小破折あるいは変色などに対して,問題箇所を部分的に削除して補修することによって旧修復物本体をそのまま再利用する,補修修復が提案されている。 光重合型レジンの象牙質に対する接着耐久性に関しては,その接着界面を構成している象牙質,アドヒーシブおよびコンポジットレジンの物性,とくに弾性率が大きな影響を及ぼすものと考えられている。そこで,今回補修修復における実験の一環として,シングルステップシステムによって形成された接着界面の各構成成分について,口腔内環境を模したサーマルサイクルの影響について検討を加えた。しかし,このサーマルサイクル試験は,歯質に生体とは異なる速度の負荷を加えている可能性があり,その結果の考察は慎重に行う必要がある。そこで,試片を37℃水中に長期間保管することによって,被着体である歯質に対する劣化を防ぐことで接着耐久性について検討を加えた。 その結果,象牙質試片の弾性率は,水中浸漬が6ヶ月を経過すると24時間試片と比較して有意に上昇した。これは象牙質中の露出コラーゲン線維が水中に暴露されたことにより,コラーゲン線維が加水分解し,相対的にハイドロキシアパタイトの比率が増加したことから弾性率が上昇したものと考えられた。一方,脱灰試片の弾性率は,12ヶ月以降はその形状が保たれずに測定不可能であった。
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