私は、平成16および17年度科学研究費補助金若手研究(B)、課題番号16791171、研究課題『アパタイト-コラーゲン複合体の歯科治療への応用』において、アパタイト-コラーゲン複合体を歯根端切除後の骨創腔に応用すると、速やかな新生骨の形成が認められ、本複合体の生体親和性および組性を確認することができた。まだ、填入後の治癒に悪影響を与えないことから、治癒期間の短縮が可能となり、さらには、経日的に吸収されるため、いわゆる、骨置換材として極めて有用な材料であることが明らかとした。 そこで今回は、製作方法を変化させ、アパタイト-コラーゲン複合体を綿様に加工したものを用いることにより、骨置換材として応用しやすい形態となり、さらには、臨床での実用化に期待できると考えている。さらにとの綿様アパタイト-コラーゲン複合体を、抜歯後の骨空洞や、難治性感染根管である大きな根尖病巣を有する歯牙への応用を目的とし、新生次世代人工骨への置換に関して、その確立を目指し実験を遂行している。 現在までの成果として、綿様アパタイト-コラーゲン複合体を作製し、その物理化学的諸性質を検討した。その結果、架橋処理したコラーゲンをβ-GP溶液に浸漬すると、経日的に骨や象牙質に類似した炭酸含有アパタイト量が増大することが確認でき、得られた複合体は綿状で、生理食塩水で練和すると粉液比1.2において良好な操作性と示し、根管細部への填塞が可能であった。次に、複合体を骨欠損部の封鎖用材料として応用するために、凍結乾燥した複合体の加圧成形体を製し、その細部構造、組織液の吸収性、把持の可能性について検討した。石灰化の異なる複合体(1day、3days、10days、14days)をいて加圧成形(100k、30s-1min)した円盤状の複合体「厚さ0.5mm、直径5mm)を作製し、表面および割面の形態観察、および組織液の吸収性を、成形体に生理食塩水10-20μ1を加えその膨潤性を観察した。さらに把持可能な強度についてEZ Graph (SHIMADZU)を用いて圧縮試験を行い、その圧縮強さを検討した。その結果、石灰化度の異なる複合体の加圧成形体は、石灰化度が少ない複合体は、線維性に富み、弾力性も有しているが、石灰化が進むにつれその線維性も少なくなっていき弾力性も失っていった。また、石灰化が少ない試料ほど形体内に適度な空隙を有し、吸水性も優れていることがわかった。圧縮試験から、石灰化度(Ap%wt)が増えるに伴い圧縮強さも大きくなることがわかった。これらのことから、複合体は軽度の加圧で成形ができ、その成形体は適度な空隙を有し、また吸水性を有しているため、生体に応用するに有効であると考えられた。さらに成形体はピンセット等で把持して応用できる強度を有していることから生体応用時の操作性は良いと推測された。
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