昨年度はレーザー照射後の象牙質に対する接着性に注目し、照射後の歯面に対する接着性セメントの接着性能に対する検討を行った。その結果、従来型のレジンセメントおよびグラスアイオノマーセメントは照射面表層より0.4mm削除した歯面に対して本来の接着性を回復するのに対し、セルフアドヒィージョンタイプのセメントは照射歯面表層より、比較的安定した接着性能を示した。これは従来から言われているレーザー照射において生じた変性層の除去を必要とせず修復する可能性を含んでおり、生成された歯質強化層を除去することなく修復する場合に有効であると考えられた。 平成21年度は各種アパタイトとレーザー照射を併用してより強固で化学的に安定した歯質強化層の広範囲な獲得を目標に研究を行った。その結果、ナノサイズの粒径をもつアパタイトを塗布した後にレーザーを照射することで、象牙質表層ならびに象牙細管内にアパタイトを比較的強固かつ広範囲に熔着することが出来ることを確認した。 これまでの研究で報告者は、一定条件下でアパタイトのペーストを象牙質に塗布後もしくはアパタイトの粉末を噴射させた後にレーザーを照射することで、象牙質表層ならびに象牙細管内にアパタイトを熔着することが出来ることを確認した。しかし、使用したアパタイトでは熔着する範囲が限局されており、またその強度も弱いという欠点も認められたが、これらを改善する方法となりうるであろう。そして従来の方法と比較してより積極的な歯質の強化が可能であることが示唆された。
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