研究概要 |
本研究の目的は,ブラキシズムの測定と同時に,ブラキシズムや頭頚部筋の慢性疼痛発現への関与が考えられる因子を分析し,ブラキシズムが頭頚部筋の慢性疼痛を引き起こすメカニズムを解明することである.因子としては,ストレス,疼痛耐性,血行障害,筋線維組成,遺伝的要因などが考えられたが,その中でストレス,血行障害,筋線維組成の3項目を関連因子として検討した. ストレスの評価には,ストレスマーカーとしてコルチゾールを用い,まずはコルチゾールの日間変動について検討した.その結果,コルチゾールには日間変動が存在するが,1日の中では起床時の日間変動が一番少ないことが明らかになった.そこで,起床時のコルチゾール量をストレス評価に用いた. 血行障害の評価は,咬みしめ前後の咬筋血流動態により行った.血流動態は3波長型近赤外分光血流計を用いて測定した. 筋線維組成から筋の疲労耐性を予測できるが,生体の筋線維組成を測定することは不可能である.そこで,筋電図における周波数分析により間接的に筋の疲労特性を評価した. ブラキシズムの評価には標準データが必要となるが,既存の標準データは測定システムによって異なるため,本研究システムにおける顎機能健常者と歯ぎしり患者の標準値を作製した.標準値を基準とすることで,実際に得られたデータをブラキシズム群,非ブラキシズム群に分け評価することが可能となった. 以上より得られたデータから,ストレスと筋の疲労特性がブラキシズムと関連している可能性が疑われ,それぞれの因子間の多変量解析が必要と思われたが,測定方法の確立,ブラキシズムの標準値作製に時間を要したため,2年間の研究期間において多変量解析を行うのに十分なサンプル数を得るまでには至らなかった.しかしながら,本研究で得られた成果は,今後,さらに多くのサンプルを用いた大規模研究を実現するためには,重要な役割を果たすものと思われた.
|