研究概要 |
当研究は, 高濃度過酸化水素を用いて行う歯の漂白時に起こる知覚過敏などの副作用を解消、あるいは軽減するために、できるだけ低濃度の過酸化水素と、その活性を促進するための光照射を行い、より副作用の少ない歯の漂白法を開発することが目的である. 歯の漂白の原理は今のところ解明されていないが、過酸化水素から発生する活性酸素・フリーラジカルが、色素分子の重合を切断することにより起こると考えられている. そこで、現在市販されている歯の漂白剤の中で,液状でESRにて測定可能な製品(過酸化水素濃度3.5%)を用いてフリーラジカル発生量を測定した. その結果、同条件下においてこで、現在市販されている歯の漂白剤の中で, 液状でESRにて測定可能な製品(過酸化水素濃度3.5%)を用いてフリーラジカル発生量を測定した. その結果、同条件下において、市販の製品から発生するフリーラジカル量よりも、同濃度の過酸化水素単独から発生するラジカル量の方が遙かに大きいことがわかった. 市販の製品には、操作性を改良するために、過酸化水素以外のさまざまな成分が配合されているが、それがスカベンジャーの働きをしている可能性が示唆された. また, メラニン色素水溶液を用いた実験では、過酸化水素濃度に依存して, また照射出力に依存して、効果的に漂白が行われることを確認した. 実際に過酸化水素単独から発生するフリーラジカル量は、その濃度と光の照射出力・照射時間に依存して大きくなることを、ESRを用いた実験により確認している. つまり、色素の漂白は仮説通り、過酸化水素から発生するフリーラジカルが色素の重合を切断することにより起こっている可能性が高いと考えられる. ただし、フリーラジカルがあまり高濃度で発生するということは、正常組織に与えるダメージも大きいことが予想される. また、実際に用いている市販の漂白剤からは、それほどと高濃度のラジカルが検出されていないことを考えると、赤色レーザーをパルス化して得られるフリーラジカル量というのが非常に有効である可能性があることがわかった.
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