研究概要 |
近年、コンポジットレジンの物性、歯質に対する接着性の改良が進み、既製ポストを併用したレジン支台築造が使用されるようになってきた。グラスファイバーポストを用いたレジン支台築造体の弾性率は天然歯に似ている為、応力の集中を減少させ歯根破折の防止が期待されるようになってきた。しかし、臨床治療においては根管処置後の歯牙の状態(特に残存歯槽骨の量、残存歯質の量、歯質の厚さ等)は様々である。その際の支台築造法として鋳造支台築造法、レジン支台築造法が考えられるが明確な選択基準は明らかになっていない。本研究では歯質の厚さに着目し、脆弱な歯質をコンポジットレジン、グラスファイバーポスト、金銀パラジウム合金等を用い歯質を補強する支台築造法を見出すことを目的とした。 32本の抜去牛歯をヒト下顎小臼歯様に歯頸部での厚さ0.8mm、歯根長12mmとなるよう加工し根管充填を行った後、深さ8mmの漏斗様根管を呈した歯根を作製した。コンポジットレジンのみで築造したもの(CR)、径1.5mmのグラスファイバーポストを併用したレジン支台築造(FRC)、金銀パラジウム合金で築造したもの(MC)、根管内をコンポジットレジンで充填した後、金銀パラジウム合金で築造したもの(CRM)それぞれを専用ジグに包埋した後、歯軸に対し45度より万能試験機(AUTOGRAPH AGS-H, 島津製作所)を用い、クロスヘッドスピード1mm/minにて負荷荷重試験を行った。CRMは他の群に対し有意に高い破壊強度を示した。ただし、すべての群において再修復不可能な破折様相を示した。歯質が薄く脆弱な症例でのコンポジットレジンによる歯質補強効果の可能性が示唆された。 次年度はグラスファーバーポストの弾性率に着目し、より適切な支台築造法について探求を行っていく予定である。
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