研究概要 |
高次脳機能と咀嚼運動に関して,ガム咀嚼時に視覚野の活動が確認され、一次視覚野はガムの大きさ,硬さに関連することが明らかとなっている.また,口腔内の形態認知は物体から得られる情報が,大脳皮質にて過去の感覚記憶と比較・統合されることでなされるとされている.以上から,口腔形態認識能試験時には一次視覚野の処理を受けることが予想される. 平成21年度では、正常有歯顎者15名を対象に、口蓋部の形態に相違のある2種の実験用口蓋床が咀嚼効率と口腔形態認識に与える影響,およびそれらの関係に与える影響を調べた,結果,口蓋正中部を被覆しない無口蓋型の床装着は,咀嚼効率に影響を及ぼさなかったが,口蓋正中部を被覆する床は、咀嚼効率を低下させ,さらに咀嚼効率と口腔形態認識能との間の正の相関関係を消失させた.以上より,口蓋正中部を床により被覆することは,咀嚼能力を低下させ,口腔形態認識能力による咀嚼運動の制御機構に障害を与える可能性が示唆された. また,正常有歯顎者7名を対象に,口腔形態認識能試験時の一次視覚野領域の脳血流量を光トポグラフィー(ETG4000(HITACHI, Medical Co.)により測定し,口腔形態認識時に視覚野の活動が関わるかを検討した.結果,口腔形態認識時に脳血流量は有意な増加を示し,咀嚼効率と関連の認められている口腔形態認識能は視覚野を活性化し,咀嚼の円滑な遂行になんからかの影響を与えている可能性が示唆された.
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