研究概要 |
咬合を考える上で顎関節の動態を把握することは必要であり, これまで補綴治療の術式では調節性咬合器などを用いることで顆頭運動の再現を行ってきた。しかし, 実際の下顎頭や関節窩は複雑な形態をしており, 下顎運動時の下顎頭も移動と回転を伴う複雑な運動を行っている。本研究では下顎頭と関節窩の形態をCT画像から三次元的に立体構築して下顎運動時の顎関節空隙の立体的な解析を行うことを目的とする。具体的には咀嚼運動時の顎関節空隙の最短距離と最短距離を示す部位を算出してトレースし, 最短距離部位の経路の再現性を健常者, 顎機能異常者について解析結果を比較検討する。6自由度顎運動測定器CS-Iiiはそれ自体で顎運動解析に必要な精度を満たしているが, 形態データとの重ね合わせのためには, より高精度の測定器が必要になる。CS-Iiiは小型のコイルを使用した磁気方式の測定器であり, 従来の測定器よりも生理学的な測定が行えるが, 形態データとの重ね合わせ, とりわけCT画像との重ね合わせを想定すると, 大型の磁気空間を発生させ, その空間内で顎運動や重ね合わせに必要なマーカーの位置測定を可能にできれば, より重ね合わせ精度が上がることから測定器の試作を行った。直径1mの一次コイルをxyz各軸に1つずつ配置し, 且つ被験者が容易に空間内を出入りでき, 術者が簡便に測定できる機器とした。また, 二次コイルは19mmの立方体で, 二次コイルにペン型の入力装置を組み込むことで, マーカーの位置を測定する。一辺300ミリメートルの立方体領域において, 位置分解能は0.010ミリメートルから0.029ミリメートルRMSであった。姿勢分解能は0.0016°から0.0066°RMSであった。位置分解能, 姿勢分解能ともに, 基準点から離れていくにつれて, 分解能が下がる傾向にあり, 解析処理にはさらなる改良が必要である。
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