研究概要 |
咬合を考える上で顎関節の動態を把握することは必要であり,これまで補綴治療の術式では調節性咬合器などを用いることで顆頭運動の再現を行ってきた。しかし,実際の下顎頭や関節窩は複雑な形態をしており,下顎運動時の下顎頭も移動と回転を伴う複雑な運動を行っている。本研究では下顎頭と関節窩の形態をCT画像から三次元的に立体構築して下顎運動時の顎関節空隙の立体的な解析を行うことを目的とする。具体的には咀嚼運動時の顎関節空隙の最短距離と最短距離を示す部位を算出してトレースし,最短距離部位の経路の再現性を健常者,顎機能異常者について解析結果を比較検討する。これまで顎運動を測定する機器として小型コイルを用いたCSIIiや大型コイルを用いた6自由度顎運動測定器の性能向上を図ってきた.さらにCSIIiよりも小型コイルを使用し口腔内での設置が可能な測定器についても精度向上を行ってきた結果,下顎限界運動範囲の最大コイル間距離は79.79mmであり,その時の位置分解能0.152mm RMS,姿勢分解能0.231°RMSであった.最も測定精度が要求される咬頭嵌合位を含む滑走運動範囲の最大コイル間距離は58.68mmで位置分解能0.048mm RMS,姿勢分解能0.104°RMSまで達成することができた. 小型コイルは設置スペースを最小に抑えることが可能で,生理的な運動測定が可能となる反面,本研究のように画像データとの重ね合わせを行うためには測定器の位置や姿勢が大きく左右し,これが誤差の原因ともなることから,まずは正確な重ね合わせを行うことを目的としてCSIIiを使った顎運動測定により立体運動の再現を行った.今後は立体運動の詳細な解析を行うと共に,システムの改良を行うことで,効率的な測定・解析を行えるようにする.
|