研究概要 |
咬合を考える上で顎関節の動態を把握することは必要であり,これまで補綴治療の術式では調節性咬合器などを用いることで顆頭運動の再現を行ってきた。しかし,実際の下顎頭や関節窩は複雑な形態をしており,下顎運動時の下顎頭も移動と回転を伴う複雑な運動を行っている。本研究では下顎頭と関節窩の形態をCT画像から三次元的に立体構築して下顎運動時の顎関節空隙の立体的な解析を行うことを目的とする。具体的には咀嚼運動時の顎関節の運動をコンピュータグラフィックス上でアニメーションとして再現し,また下顎運動時の下顎頭-関節窩の顎関節空隙を解析する。 顎運動測定用シーネとCT撮像用基準標点を一体化したアクリルの治具を作製した。アクリルの治具には重ね合わせ用のセラミック球を4つ配置し,治具を装着後CT撮影を行い,その後で6自由度顎運動測定器を用いてCT撮影時の咬合状態を測定し,その後で咀嚼運動を含めた各種顎運動を測定した。すべての測定に要した時間は1時間以内であり臨床応用可能と考えられる。 三次元再構築した顎関節を6自由度顎運動データとリンクすることで,関節窩に対して下顎頭がどのように動いたかを解析した。左側方滑走運動時において下顎頭-関節窩の最短距離を算出した.切歯点における移動距離で咬頭嵌合位を含めて2,4,6,8,10mm移動時を解析点とし,作業側(左側),非作業側(右側)顎関節における下顎頭-関節窩の最短距離を計算すると,作業側穎頭で0.315,0.533,0.480,0.524,0.490,0.438(mm)で非作業側穎頭では0.358,0.407,0.452,0.324,0.637,0.655(mm)となった.非作業側は前方への移動を示したが,作業側顆頭では外側の背面が後方へ動くように回転しながら運動していた。
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