本研究は、インプラント埋入時に起こりうる周囲骨の吸収に対して、生体活性物質を投与することにより、骨吸収を抑制することができれば、オッセオインテグレーションの獲得が可能になるかどうかを検討することを目的としている。本年度では、骨吸収抑制のできるタンパクの評価をin vitroで行うことを中心に行ってきた。破骨細胞形成抑制因子として、Interleukin-1 Receptor抗体(IL-1RA)を選択した。In vitroの実験系においてこれら2つのタンパクをラット骨髄細胞を用いた破骨細胞分化系(活性型Vitamin D3添加)に添加し、その効果を確認することとした。本法であるが、ラット骨髄細胞を採取後、3日間培養後にメディウムを交換し、2日後(培養期間計:5日間)に破骨細胞のマーカーである酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)で染色した。その結果、IL-1RAともに濃度依存性に破骨細胞様細胞(TRAP陽性多核細胞:TRAP染色陽性で、かつ3核以上を有する細胞)の形成を抑制した。 次に、動物実験では、ラットを用いて、予備実験を開始した。ラット脛骨に埋入窩を形成し、ここにIL-1を投与し、インプラントを埋入した。脛骨へのインプラントの埋入に際し、インプラント周囲に2mmの骨欠損を作り、2週間後に肉眼と組織標本による観察を行つた。本モデルにおいては、IL-1RA投与群においてインプラント周囲の骨欠損はコントロール群と比較して、骨の欠損は小さくなっており、また皮質骨も厚い傾向が認められた。 さらにイヌにおける同様の実験を行つたところ、ラットの場合と異なり、インプラントのサイズがイヌの顎骨に対してやや大きかったためか、オッセオインテグレーションの獲得が困難なものも認められた。また、欠損がラットよりも広範囲にわたるため、キャリアやIL-1RAの量に関しても十分な検討ができず、今後の検討課題も残った。
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