高齢者が人生の最後まで美味しく・安全に食べるためには、在宅でも実施可能な口から食べる機能(咀嚼と嚥下)の統合的評価法の確立が急務である。今年度は、液体命令嚥下におけるビデオ内視鏡を用いた口腔と咽頭の統合的機能評価法を応用し、在宅高齢者の多くに惹起される摂食・嚥下障害のリハビリテーションで用いられることの多い、半固形状食品摂取時の咀嚼・嚥下機能に関する研究を行った。また、液体嚥下時との比較を行うとともに、口腔期と咽頭期障害の頻度に関する摂食・嚥下障害の臨床統計学的調査も一部行った。 健常有歯顎者7名を対象に、半固形状食品を咀嚼・嚥下させ、ビデオ内視鏡所見の画像データを内視鏡カメラヘッドを通じてデジタルビデオカメラに記録、また、同時に舌圧データを記録した。これらのデータをディスプレイに表示させ、各データの時系列上の関連、食塊の流入時間について画像・動画解析ソフトを用いて検討し、咀嚼による食塊形成能、舌による食塊輸送能、咽頭期嚥下の評価を行った。前方部の舌接触開始から喉頭蓋の復位までの時間は、液体1.19秒に対し、半固形状食品1.41秒であった。また、前方部の舌接触開始から、食塊の口蓋弓通過までの時間、ホワイトアウトまでの時間、中央部・後方部における舌接触開始・最大圧発現までの時間が、液体に比べ半固形状食品嚥下時に有意に延長した。一方、舌運動開始から前方部における舌接触開始までの時間は、有意に短縮した。ホワイトアウトの持続時間、食塊の口蓋弓通過から喉頭蓋の復位までの時間には、有意な差は認められなかった。以上より、食塊の性状は、口腔と咽頭の嚥下機能の時間的関係に影響を与えることが示唆された。このような口腔期と咽頭期の障害は、臨床的にも多く観察されたのは口腔期障害で、次いで咽頭期障害であった。
|