健常有歯顎者を対象に、申請者のこれまでの液体命令嚥下における研究成果と、昨年度の半固形状食品の咀嚼・嚥下における研究成果を応用して、ビデオ内視鏡を用いた自由咀嚼時における食塊形成に関する研究を行い、特に、食品物性による変化、また、従来の咀嚼機能評価法のうち混合能力試験との比較検討を行った。 被験者は健常有歯顎者6名(平均年齢26.8歳)とした。経鼻的にビデオ内視鏡を挿入し、中咽頭全体が観察できる位置にて固定し、2種類の被験食品(白色・緑色の2色米飯と2色ういろう、各12g)を、咀嚼回数を規定(10、15、20、30回)して摂食させ、内視鏡画像をデジタルビデオカメラに記録した。データをパーソナルコンピュータ上に取り込み、画像解析用ソフトにて内視鏡レンズによる歪みを距離補正して除去した後に、動画解析用ソフトを用いて食塊形成度の計測を行った。食塊形成度は、ホワイトアウト直前の食塊における2色の混合度(食塊中の白色部分以外の面積÷食塊の全面積×100)とした。 米飯では、咀嚼回数が増えるにしたがい食塊形成度が有意に増加した。ういろうにおいても米飯と同様に、咀嚼回数に伴って有意に食塊形成度が増加した。米飯とういろうの比較では、咀嚼回数による食塊形成度の変化はういろうで大きく観察された。米飯は粒状のため混和がういろうより容易なため、ういろうで咀嚼回数の影響をより反映したと考えられた。ワックスキューブを用いた混合能力試験においても、咀嚼回数が増加するに従い混合値が有意に増加しており、食品性状の違いに関わらず、ビデオ内視鏡を応用した咀嚼機能の定量的評価が実施可能であったこと、また、従来の咀嚼機能評価法と同様の結果を呈したことから、これまで単二に評価されてきた混和や咬断などの咀嚼機能を、ビデオ内視鏡を用いて包括的に評価できる可能性が示唆された。
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