研究概要 |
良質な有床義歯補綴治療を提供するためには適正な術式の選択が必須であり,義歯支持組織の的確な診断を行うことが極めて重要である.しかし,粘膜組織の義歯支持能力は各個人,各部位により異なるため,有床義歯補綴治療の診断に際しては客観的分析が重要と考えられ多くの研究がなされてきた.(阿部ら,1998)現在,有床義歯補綴治療の診断基準である日本補綴歯科学会で推奨されている症型分類では,・無歯顎の欠損部顎堤形態(高さ・断面形態)・粘膜性状(硬さ・厚み)について難易度判定を行っている. 無歯顎欠損部顎堤形態においては当教室の一連の研究で定量的評価が可能となった。赤坂ら(2005)は複数の歯科医師によって100組の研究用模型を主観的評価と模型計測による客観的評価から基準値を決定し,補綴学会の症型分類の診断基準として採用されている.石原ら(2007)により顎堤の高さと断面形態の基準値から顎堤診断用スケールの開発を行った.一方,粘膜性状(硬さ・厚み)については当教室で一連の研究が進行中である。原ら(2007),細野ら(2007)は粘膜の「硬さ」と「厚さ」の定量的評価法を確立し,その相互関係について明らかにしてきた。しかしながら,咬合圧荷重時の疼痛閾値と粘弾性特性については同時に計測するシステムはこれまで全くないため,診断基準値の設定には至っていない。そこで,義歯支持粘膜の硬さ,厚さ,疼痛閾値,被圧変位量,粘弾性をリアルタイムに同時計測するシステムを開発し,義歯支持能力の判定を行うことを本研究の目的とした。
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