研究概要 |
近年,審美性や生体親和性の優れていることから,オールセラミッククラウン・ブリッジは臨床への導入が一般化しつつあり,質の高い臨床報告も多く見られるようになってきた.しかし,レイヤーリングポーセレンの破折といったトラブルは絶えず報告されており,その信頼性は,特に大臼歯部においては臨床的に十分であるとは言えない.そこで,本研究ではコーピング形態の最適化によるオールセラミッククラウン破折強度の向上を目指した.研究方法としては,三次元有限要素解析を用いて,オールセラミッククラウンにおけるコーピング形態がレイヤーリングポーセレン内部の応力分布に与える影響を明確にするとともに,その最適化をはかり,模型実験によりその検証作業を行った.(1)三次元有限要素解析:支台歯形態,コーピング形態,クラウン形態の三種類のデータを,サーフェス変換ソフトウェアにて加工,3D-CAD上で重ね合わせ解析モデルの構築を行った.構築された解析モデルのコーピング形態を変更,再設計を行い,CosmosWorksにて,三次元有限要素解析を行った.(2)模型実験:三次元有限要素解析パートにおいて良好な結果を示したコーピング形態4条件(うち1条件は従来型)に関して破壊試験を行った.4条件,各8試料とし,荷重条件は,垂直荷重,側方荷重の2条件とした(total n=64).結果として,垂直荷重時,側方荷重時ともに最も高い破折強度を示したのはコーピングに解剖学的形態を付与したモデルで,垂直荷重時平均4429.0N,側方荷重時平均2446.0Nであった.このことから,オールセラミッククラウンのコーピング形態に解剖学的形態を付与することで,レイヤーリングポーセレンの破折といったトラブルを減少させる可能性が示唆された.
|