研究概要 |
QOLの向上のために口腔の健康維持が必要であると考えられているが口唇機能については軽視されているのが現状であり、その大きな理由としては、口唇が発揮する力の測定法が絶対値でしか論じられていないことが問題であると考えられる。さらに、口唇閉鎖力は方向により異なり、その分布には個体毎の特徴が表れると考えられる。つまり口唇の解剖・生理を考えると、口唇機能の評価に多方向からの力を測定し、その分布を用いるという方法は非常に有用であると考える。国内外を問わず、口唇の機能評価について多方位口唇閉鎖力を用いて行った研究は無い。本研究は松本歯科大学で開発された多方位口唇閉鎖力測定をより発展させ、高齢者の口唇機能を評価することを目的とする。 本研究の遂行のために、小型多方位口唇閉鎖力測定装置の開発・改造を行い、十分な性能を持つ装置が完成した。研究協力に承諾を得た塩尻市および山形村在住の高齢(60〜88歳)の健常者に対して、多方位口唇閉鎖力測定を行った。これと同時に体重・身長および握力の測定、一般口腔内診査(口腔内チャート, 歯周検査など)、アンケート調査も行った。この結果、口唇閉鎖力は年齢には関係せず、男性の方が女性より大きかった。また、口唇閉鎖力の総合力は, 身長、体重、握力と弱い相関があった。義歯を装着している人では口唇閉鎖力の大きいグループが認められた。そのことが何に起因するかを今後の課題としたい。本年は義歯を新製する患者を対象とするには至らなかった。
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