研究概要 |
上顎前歯の口蓋側形態は臼歯の咬合面形態と同様に,顎口腔系の機能に深く関わっている.よってこの形態をクラウンで機能的な状態に修復した場合に,クラウンの機械的強度が損なわれてしまわないことが求められる. そこで本研究はオールセラミッククラウンを上顎前歯に応用したときに,クラウンの口蓋側形態が歯への応力分布にあたえる影響について三次元有限素法をもちいて解析することを目的とした. 有限要素解析モデルとして上顎左側中切歯を選択し,人工歯にオールセラミッククラウンのための支台歯形成を行った.このときの支台歯形態と装着されるクラウンの形態は応力分布に影響をおよぼすため,支台歯形成は可及的に削除量が一定になるようにおこなった.この試料をマイクロCTでスキャニングし,汎用有限要素解析プログラムにデータを入力し10節点四面体弾性要素で分割した解析モデルとした.解析モデルにおいてはクラウンをセラミックフレームにレイヤリング法で製作するオールセラミッククラウンとし,支台歯部は象牙質に近似した弾性率をもつコンポジットレジンを想定した. 応力解析あたり,クラウンにかかる負荷を工夫することが本研究の特異な点であるため,下顎前が滑走運動時に上顎前歯口蓋側にかかる負荷を考慮した.具体的には切縁部,切縁から1/3の位置,切縁から2/3の位置とし歯軸に対して135゜の角度で圧縮力が加わるものと想定した. 応力分布図からどの負荷条件においても荷重点には高い圧縮応力が発生し,その周囲に引張応力が発生した.
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