徐放キャリアとしての高分子多糖の有用性を検索するために、これまでに骨芽細胞へのヒアルロン酸の影響について、骨新生の初期段階である遊走・増殖や、それ以降の過程である石灰化について報告してきた。その結果、石灰化以前の初期段階で効果が確認できたため、石灰化ならびに骨代謝関連分子産生の影響を他の薬剤にて確認し、高分子多糖との併用も視野に入れ検索した。今回は、高齢女性の公衆衛生上の大きな問題として取り上げられている閉経後骨粗鬆症の治療薬である選択的エストロゲン受容体モジュレーターの一種であるラロキシフェン(Ral)とイソフラボンの一種であるダイゼイン(Dz)の併用が骨代謝に及ぼす影響を明らかにするために、骨芽細胞の株細胞であるKUSA-Al細胞を用いて、骨代謝関連分子の産生をELISA法で、分化・石灰化能をALP活性、von Kossa染色で検討した。培養14日後では無刺激のコントロールと比較して、Dz(10^<-6>M)+Ral(10^<-7>M)存在下において高いALP活性を示した。ELISA法の結果よりRANKL産生はRal(10^<-7>M)のみ、またはDz+Ral存在下で、コントロールと比較して著明に減少した。von Kossa染色では、培養28日後でコントロール・実験群ともに濃染されていたが、著明な差はみられなかった。 これらの結果より、骨芽細胞にRalならびにDzを作用させた場合、骨芽細胞の石灰化促進効果はみられなかったが、骨芽細胞の破骨細胞分化促進作用を抑制することが明らかとなった。今後、高齢患者への徐放キャリア適応を目指すため、骨関連疾病の薬剤との併用が可能かどうかも検討していく予定である。
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