歯周組織の新生・再生のために高分子多糖を徐放キャリアとして使用可能かどうかをin vitroにて検索を行った。高分子多糖はヒアルロン酸(HA)を用いた。全実験で用いた細胞は骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)、HAは分子量6-12x10^5のアルツディスポ(R)である。HA添加時における骨芽細胞の接着能について検索した結果、HA添加群では差は認められなかったが、抗CD44抗体添加で接着能は低下した。生体と同じ3次元をin vitroにて再現したコラーゲンゲル培養は創傷治癒過程における創の収縮を模倣しているとされているが、細胞を包埋したコラーゲンゲルをHA添加の下で培養したところ有意に収縮が見られ、抗CD44抗体添加時には収縮率は減少した。同条件の細胞をゲルから抽出し遺伝子解析を試みたが、細胞の回収が通法と異なるため手技の均一化を検討中である。細胞移動能を検討するために蛍光色素で標識した細胞をカルチャーインサート(ポアサイズ8ミクロン)上層へ入れ、下層にHA添加培地を入れ、ポアを通過した細胞の蛍光を検出した。HA添加群はポジティブコントロールと比較して優位に移動がみられ、抗CD44抗体添加によっても変化は見られなかった。細胞の活性と接着にはCD44の関連が考えられるが、細胞の遊走にはCD44を介さずにHAが関与しているものと思われる。HA溶液へのキャリアとして成長因子の混合は可能と考えるが、少しずつ長期間に渡って放出する徐放に関しては、粘稠性のあるHA溶液である程度は期待できるが、現在も検討を重ねているところである。ただ、臨床におけるアプライ方法のイメージとして含嗽や貼薬など簡便な方法が当初の目的であるため、最も効果が発揮できるアプライ方法が見つかれば様々な場面に応用できると考える。
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